医療腸育とは?

医療腸育とは?

昨今の研究で、世の中に存在する70%以上の病気の原因が、腸内の状態にあるということが判明してきました。その腸の状態を表す言葉で最近注目を集めているのが「腸内フローラ」です。人の腸内に棲む細菌は重さにして1~2㎏、その数は数百種類・100兆個を超えます。さまざまな菌が種類ごとにまとまって生息する腸内菌叢の様子を、花々が咲き乱れる花畑に見立てて呼ばれているのが「腸内フローラ」です。

この花畑にはあなたの嫌いな花もあり、それがどんどん勢力を増やしていったとします。腸内フローラの環境は人それぞれに異なりますが、それが肥満や美容、そしてさまざまな病気にも深く影響していることが分かってきました。生活習慣病はおろか、うつ病や糖尿病、さらには癌に至るまで、現代人を襲うほとんどと言える多くの病気に深く関係しているのです。

医療腸育とは、これら腸とさまざまな病気の因果関係を医学的に理解し、さらには実際に腸内フローラをよい状態で維持するための医学的根拠のある情報を活用して、健康寿命を延ばす活動です。

腸内環境と病気・老化・肥満の関係

腸内で起こる炎症が大問題

腸内フローラが、なぜさまざまな病気の原因となりうるのでしょうか?

腸内細菌は善玉菌と悪玉菌、そして日和見菌の大きく3種類に分けられます。一般的に健康な成人は善玉菌が20%、悪玉菌が10%、日和見菌が70%程度とされていますが、これが加齢やストレス、偏食などの要因によって悪玉菌が増加すると消化不良等が起こり、腸内の毒素が増加して、その影響で腸壁が傷ついてしまうのです。(=炎症状態)

そして、その傷ついた腸壁から毒素が血液に流出。血管では動脈硬化を促し、すい臓ではインスリン分泌に悪影響を与え、肝臓では過度な負担を引き起こすなど、さまざまな病気の引き金になっていきます。本来、栄養を吸収するはずの腸が、毒素を吸収し、体中にまき散らかし、全身のさまざまな箇所に悪影響を及ぼしていくのです。
腸壁の炎症は、食事の影響などによって頻繁に起こりえますが、腸の細胞は2日サイクルで新たに生まれ変わるため、すぐに修復されます。恐ろしいのは、腸内環境が継続的に悪化して、『慢性炎症』になってしまうことです。一度慢性炎症になった細胞は二度と元には戻りません。腸の炎症は自覚症状がほとんどないため、ちょっとした下痢程度だと思っていたものでも、持続することで慢性炎症となり、やがては機能が失われてしまいます。そして、腸から血液に流入した毒素が全身へ……。

果たして、あなたはどれだけの危険を知って、日頃から腸の状態を意識していますか? 決して見逃してはいけない腸のサインを、軽い不調と見過ごしてはいないでしょうか?

花粉症も、ガンも
「病は腸から」全身に広がる!

腸の慢性炎症を考えたとき、便秘という状態がいかに危険であるかは想像できるでしょう。米国のデータでは、乳がん発症者の4人に1人が便秘であるという調査結果が報告されています。また、大腸がんは女性のがん死亡者数では圧倒的な多さを占め、いよいよ日本人のがん発症数第1位となってしまいました。日本人で便秘を訴える人の割合は男性が1割程度なのに対して、女性は5割以上。明確な因果関係は研究段階ですが、便秘という腸の状態が悪影響を及ぼしているという疑念は、とてもぬぐい去ることはできません。
多くの日本人が悩まされている『花粉症』も、発症原因として腸内フローラが指摘されています。体の免疫システムの6〜7割は腸に集中しており、その活動には腸内フローラが深く関係しています。腸内環境が悪化し、悪玉菌が増加することで免疫力が低下し、アレルギーの症状が増大してしまうのです。花粉症に限らず、免疫力の低下が健康にどれほど恐ろしい影響を及ぼすかは、いまさら語るまでもないでしょう。

腸内環境が老化スピードも決める!?

“加齢”と“老化”はイコールではありません。“加齢”は年月とともに徐々に進んでいくだけですが、“老化”とは、体のさまざまな細胞が老い劣っていく現象です。もちろん、そこには加齢も関係していますが、それ以上に老化スピードに影響を与えているのが腸内フローラにほかなりません。  腸内フローラのバランスが崩れて悪玉菌が増加することで腸内の毒素が増え、炎症が起こり、さまざまな悪影響が起こることは前述しましたが、これによって身体中のさまざまな細胞は老化に蝕まれます。特に、腸と同じ外皮機関である肌はその影響を受けやすく、最近では化粧品よりも腸内フローラを整える方が美肌効果が高いともいわれるほどです。

それでなくとも、腸は老化しやすいといわれている臓器です。実は、血液を必要とする臓器ほど寿命が短く、腸は臓器の中で最も血液を消費しています。腎臓が20%、脳でさえも15%でしかないにもかかわらず、腸は30%以上と大量の血液を使っています。つまり、腸は最も老化しやすい臓器なのです。
 腸内フローラは加齢によって悪玉菌が増加していく傾向にありますが、それ以上に肉の食べ過ぎや野菜不足、運動不足、喫煙、過度の飲酒、ストレスなどの影響を受けやすいのです。このような要因により、実年齢とは大きくかけ離れた“腸年齢”になっている人は少なくありません。データでは、若い女性ほど実年齢と腸年齢の差が大きくなっています。
 “年齢”は、ほとんどの方が日頃から意識していますが、実年齢は人の身体にとってはあまり意味がなく、本当に気にかけておきたいのは腸年齢のほう。さて、あなたの腸年齢は何歳でしょうか? 腸年齢を若く保つことができれば、それはすなわち美しさと健康を維持できるということでもあるのです。

肥満体質も腸内環境の仕業だった!?

肥満と腸内フローラの密接な関係も、最近の研究によって鮮明になってきました。マウスによる研究では、腸内フローラを移植すれば、太る体質も移植されてしまうという報告もあるほどです。

肥満メカニズムのポイントは、やはり腸壁の炎症です。太りすぎ=肥満状態とは、体内の脂肪細胞が炎症を起こして膨らんでしまっている状態(=肥満脂肪細胞)。脂肪の多い食事などで腸内の悪玉菌が優位になって毒素が増加、腸管がダメージを受け、腸内の毒素が腸壁の隙間から血中に漏れ出して脂肪細胞の炎症を引き起こすことが原因です。こうして、正常であった肥満細胞が、傷ついた炎症状態である肥満脂肪細胞へと変化して正常な働きができなくなり、水分や老廃物を溜め込み、むくみやセルライトへとつながり、肥満の負のサイクルから抜け出せなくなるのです。
しかし、腸管のバリア機能が正常なら、炎症を起こす毒素は脂肪細胞まで届きません。腸内フローラの善玉菌、悪玉菌、日和見菌のバランスが保たれ、腸内環境が正常であることは、肥満防止の根本的解決策になりうるのです。
同じものを食べても、太る人と太らない人が存在します。“肥満体質”と漠然と呼ばれていたものの正体こそ、まさに腸内フローラなのです。

腸内フローラは変えられる!

人の細胞は約37兆、うち赤血球が28兆、ところが腸内フローラを形成する腸内細菌は100兆個以上。人の細胞よりもはるかに多い腸内細菌が、しかも身体に重要な影響を与えているこの事実には、DNA研究者さえも驚きを隠せません。

人の腸内細菌は、生まれた時からその量こそ変わらないですが、腸内フローラの構成比率は大きく変化します。なんと、赤ちゃんの腸内は99%がビフィズス菌。実は、生まれたばかりの赤ちゃんには菌が全く生息していませんが、出生1週間ほどでビフィズス菌で満たされるようになります。秘密は“母乳”で、ビフィズス菌を増殖させるとともに、大腸菌などのそれ以外の菌を殺してしまうために、赤ちゃんの腸内環境はとても良好な状態が保たれるのです。
ビフィズス菌はその後、離乳が始まるころから徐々に減りはじめ、成長期には安定するものの、老年期になると減少します。善玉菌であるビフィズス菌が減少すると悪玉菌が増え、アンモニアなどの腐敗産物が増加することになります。

すでに、腸内フローラが及ぼす身体へのさまざまな影響は伝えてきましたが、腸内フローラのバランス維持の最重要ポイントとなるのが、加齢とともに減少してしまう、このビフィズス菌をいかに増やすかということです。
人のDNAは生涯変わりません。そして変えることもでません。ですが、腸内フローラは変化してしまうし、変化をコントロールすることもできます。そしてそれは、DNAと同じくらいに、身体に重要な影響を与えることができるのです。

今日からあなたも『腸美人』

病気になりたくない。健康でいたい。若々しくいたい。キレイでありたい……。きっと誰もが抱くこれらの願望の実現に向けて理想的な腸内フローラを手に入れるにはどうすればいいのでしょうか?

まず、心がけたいのは「排便の習慣」です。大切なのは規則正しく、バランスの良い食事。朝食をしっかり食べて排便するという毎日の生活のリズムを身体に覚え込ませて、自然と便意が起こるようにします。
適度な運動も、血液の循環を良くして腸の動きを活発にするためには欠かせません。また、ツボ刺激も血行を促す効果や、腸を活性化させて便秘を解消する効果が期待できます。まずは便秘にならないように体調を管理し、悪玉菌が増える状況を作らないようにすることです。 便を柔らかくする水溶性食物繊維の摂取も日常的に心がけたいものです。また、ヨーグルト、キムチ、味噌などの発酵食品には乳酸菌を含むものが多く、善玉菌を増やして腸内フローラを整える効果があるのでお勧めです。
ただし、いくら乳酸菌を摂ったとしても、本来善玉菌の大半を占めるべきビフィズス菌がなければ、理想的な腸内フローラにはほど遠いのです。では、腸内のビフィズス菌を増やすためにはどうすればいいのでしょうか?

実は、ビフィズス菌は自然のままの食品には含まれていません。したがって、ビフィズス菌を添加した食品などによって摂取するのが基本となるのですが、その時のポイントは、“生きたまま腸に届く”こと。多くのビフィズス菌は酸に弱く、胃酸などによって死滅して腸まで届かないのです。最近は、この欠点をカバーして腸まで届くビフィズス菌入りの食品も多く登場しています。また、ビフィズス菌の摂取とともに、ビフィズス菌のエサとなるオリゴ糖も併せて摂取するとより効果的になります。
こうして、少しずつ『腸美人』に近づいていきますが、腸内のビフィズス菌は増殖と死滅を繰り返しながら10日程度で体外に排出されてしまうので、毎日継続して摂取することが欠かせません。

ビフィズス菌なら
何でもOKというわけじゃない!

現在、人の腸で発見されているビフィズス菌は10 種類ほどになります。動物の腸に生息するものも含めると約40種類が確認されており、世界中の研究者たちがこぞって、このビフィズス菌の機能や効果の解明に取り組んでいます。最近になってはっきりしてきたのが、それぞれの菌にはそれぞれに異なる特徴があり、機能や効果も異なるということです。細菌には「種」という分類の下に「株」という細かな分類がありますが、この「株」においても異なる特徴を持っています。血縁のある親族の中にも頭の良い人、足の早い人、絵の上手い人、肌が白い人などの個体差があるように、ビフィズス菌もDNAの違いによってそれぞれに得意分野が違うのです。
例えば、まったく同じものを食べた二人なのに、一人だけが食中毒を発症することがあります。研究によってわかったのは、ビフィズス菌がつくり出す酢酸の量が株によって異なる点です。酢酸は腸のバリア機能を高めますが、わずかに株が異なることでもその産生量に差があり、人の健康に大きな影響をもたらすのです。総じて“善玉菌”とされるビフィズス菌ですが、形状も違えば効果も違うさまざまな菌が存在し、必ずしもすべてが健康に効果アリというわけではありません。大切なのは、自分の目的に合ったビフィズス菌を摂るということなのです。

肥満体質を根本から改善する、
特別なビフィズス菌

さまざまなビフィズス菌の働きが明らかになってくる中で、いま特に注目を集めているのが、抗肥満作用を持つ特別なビフィズス菌「B-3」です。乳酸菌も含めた数千種類の細菌の中から発見されたビフィズス菌「B-3」は、BMIが高めの男女52人を対象に実施した調査において、12週程度でビフィズス菌「B-3」摂取群の体重と体脂肪の有意な減少を確認しました。肥満を防止・改善し、痩せる効果を実証したのです。
では、なぜビフィズス菌「B-3」にそのような抗肥満作用があるのでしょうか?

肥満のメカニズムは前述しましたが、高脂肪食などによって悪玉菌が増加すると、悪玉菌が産生する「LPS(リポポリサッカライド)」も大量発生します。LPS は腸壁を傷つけ、その隙間から腸外へ出て血中に流れ込み、脂肪細胞の慢性的な炎症を引き起こして肥満脂肪細胞へと変化させてしまいます。そして、脂肪細胞の慢性炎症は脂肪の合成・分解を抑制するインスリンを効きづらくさせ、この悪循環によって脂肪の蓄積が進み、肥満や糖尿病へとつながっていくのです……。
ところが、ビフィズス菌「B-3」は悪玉菌の増加を抑制し、LPS の大量発生を防ぎ、LPS による腸壁の破壊を食い止め、結果としてLPS の血中への流出をブロックします。このように、「B-3」は肥満の根本的な原因を撃退して体質を改善してくれる、特別なビフィズス菌なのです。

人生を変えてくれるかもしれない、「LM」の可能性

日本人の死因第1 位は癌ですが、2位の心臓病と3位の脳卒中は、いずれも「動脈硬化」に起因するところが大きいです。そして、この動脈硬化との関連性において近年、研究者たちが注目しているのが腸内フローラなのです。

動脈硬化は、血管の壁にコレステロールが溜まった状態だと思っている方も多いかもしれませんが、実際は異物であるコレステロールを撃退すべく集まってきた白血球の一種「マクロファージ」の死骸が溜まっている状態です。そしてマクロファージにコレステロールを攻撃するように過剰反応させているのが「炎症性サイトカイン」という物質で、実はその過剰反応は、腸から血液に漏れ出した毒素による慢性炎症が影響していると目されています。炎症性サイトカインが出ている状態は「体の中の火事」とも呼ばれ、癌を含めたさまざまな病気の引き金になるとも言われています。
また、別の方向からも動脈硬化と腸内フローラの関連性が明らかになってきました。動脈硬化を患う多くの心臓病患者の血中に見られる「TMA」という物質が、「レシチン」という栄養素を腸内細菌が分解することによって産生されることが判明したのです。もっとも、レシチン自体は重要な栄養素でもあるため、単に摂取を制限するわけにはいきません。大切なのは、レシチンを摂ってもTMAを出さない腸内フローラの実現なのです。
いま、その旗手として期待されているのがビフィズス菌「LM」です。このビフィズス菌は、抗生物質のように菌を殺すのではなく、身体に良い菌を増やして健康を守ろうという「プロバイオティクス」を実践して身体の総合力を高めてくれます。毎日継続的に摂取すれば善玉菌を増やし、悪玉菌を抑制して腸内フローラのバランスを理想的な状態へと整え、ベイビーフローラに近づけてくれるのです。

そう、「LM」は私たちの美容と健康を守り、人生を素敵に変えてくれる可能性にあふれたビフィズス菌なのです。